まぬけもの

vol.02

すっきり身軽に暮らす術やもの選びの視点を
発信するエッセイストの柳沢小実さん。
「もの」における、まぬけとは?の問いに、
オフィシャルなイメージとはひと味違う
意外な好みが浮かんできました。

柳沢 小実 やなぎさわ このみ

エッセイスト。衣・食・住・旅・台湾にまつわる著書は30冊以上。学生時代からバックパック旅を愛し、海外旅歴は35年。同じ国に何度も通うリピート体質で、訪ねた国は19ヵ国。プライベートと仕事合わせて、年に海外6回、国内10回以上、合わせて2ヶ月ほど旅する。ここ数年は、台湾とタイにハマり中。確かなもの選びの眼に定評があり、フェリシモ、リンネル×しまむら、it’s demoで商品開発なども手がける。

長く暮らしにまつわるエッセイストとして活躍する柳沢さん。
ていねいな暮らしを心がけるかと思いきや、
「それは30代でやり尽くしました。そのうえで、40代はいかにして家事をサボれるかのシステムを考えています(笑)」。
整理収納アドバイザー1級の資格も持ち、キッチンもリビングも、
ものを厳選しながらも好きなインテリアの世界観が保たれている。

30冊以上の著作を持つ柳沢さんだが、『すっきり暮らすためのもの選びのコツ』(大和書房)は、ものに関する唯一の本になる。
自らの住まいと愛用品を例に、”すっきり”が叶うもの選びの目線と収納の仕方を紹介する内容。
だけど、「今回の”まぬけもの”は、あてはまらない(笑)」(柳沢さん)

そんな、柳沢さんにとっての「まぬけもの」とは。
即答してくれたのが、こちらの4つ。

ラオス、タイ、台湾。
10年来通うアジアで出合った
ゆるいものたち

かわいくないはずなのに
かわいく見える、ラオスのなぞ人形

「まぬけと聞いたとき、最初にこれを思いつきました」
というのは、ラオスのマウンテンリゾート・ルアンパバーンに旅した際に、ナイトマーケットで手に入れた人形。
お土産屋の地面にずらりと100体以上が並べられていたそうで、
手縫い感あふれる縫製、なんらかの宗教的な意図があるのか、
髪の毛なのかわからない頭のかたち、座禅を組む長すぎる足……。
ゆるいものが多いアジアのお土産でも、これはぶっちぎりの存在感。
「表情もかわいくないのに、なんだかかわいく見える(笑)」。

定位置はソファ側のバスケットの上。太陽があたると、なんだか神々しい。

レトロ柄が好み
だけど、書きにくい
タイのノート

記録好きな柳沢さん。付箋やメモがていねいにまとめられたこのノートは、
冬休みに予定しているラオスとハノイ旅の計画のためのもの。
食べたいものを中心にリサーチはかなりしていくが、
「行けたら行くくらいのマインドで」と詰め込みすぎない行程に。
「アジアの民芸のうつわ収集と、各国のチャイナタウン散策が趣味。
カフェや雑貨、書店を巡ったり、ライブやフェスに行くこともあります」

旅は夫と行くことが多いが、滞在期間をずらすことも。
「会社勤めの夫に合わせると、飛行機の価格が高すぎて!」。
昨年も訪れたラオスは直行便がないため、
先に柳沢さんが前乗りしてバンコクにて待ち合わせを。
今年は、お互い別の国経由で入ってラオスにて待ち合わせ予定。

「仕事用には使いやすい日本の文具を選びますが、それ以外ではかわいさやぬくもり、隙があるものが好み。ちょっと時代遅れなくらいの、もう少ししたらなくなってしまいそうなものに惹かれます。アジアには、印刷が少しズレていたりと、そういった文具がまだたくさんあるんです」。
タイで見つけたノートは、表紙の柄はかわいいものの、紙はざらざらでめくりにくい。
が、「その国らしさがあっていいですよね」。
学生用なのだろうか、裏面は授業の時間割と掛け算表が。
大人は、なにに使う?

使いづらさも
味わいのひとつ
手巻きの腕時計

「そこまで、まぬけというわけではないんですが」
との前置きで見せてくれたのが、
スヌーピー、ルーシー、そして、ビッグバードのキャラ腕時計。

「スマートウォッチの時代に、使うたびに巻かなければいけないという手間や、時間がわずかにズレるという信用できなさ、がまぬけにつながるのかも」。
と柳沢さん。

「スマホでも時間は確認できますし、このくらいで十分なんです」。

古い時計なので少々時間がズレることもあるが、それでよし。
大人のキャラ時計の楽しみ方のコツは、
「ベルトを皮のいいものに変えるようにしています」とのこと。

「小心地滑」「外面食物進入」
なんだろう?が楽しい
アジアのサイン看板

キッチンの棚や外出用のキャップをかける棚など、
あちこちに置かれた海外のサイン看板。
現地の100均ショップのような雑多な店で集めてきたもの。

「中国語とかタイ語とか、いろんな国の言葉が書いてあるものが好きなんですよ。この、タイ語の”マスクして”は、そういうことをいいたくて飾ってるわけじゃなくて、絵も含めてかわいくて」。

100均クオリティのサイン看板を、絵やアートのように飾ってみる。
そこにユーモアが生まれて、完璧すぎないインテリア、
まのぬけたインテリアになるという。

Yanagisawa Zoo
すきあらば
動物が!

ここまでが、柳沢さんが選ぶまぬけもの。
「オブジェや雑貨のようなものを買うのが失敗しそうで実は苦手なんです。用途がある道具のほうが、自信を持って選べる。だから、今回、まぬけものとして紹介したものは、本来の自分のセレクトとしては異色かもしれません」。

しかし、我々は気づいてしまいました。
植木鉢の脇からのっそりと歩いてくるようなトラ。
鍋によりそう直立不動のビーバー(セイウチかも?)。
棚に集結しているうさぎや犬、猫……。
愉快な表情の動物の土人形やオブジェの存在に。

冷蔵庫のマグネットには、くまモンはじめ、
マレーシアの国立動物園Zoo Negaraのジャイアントパンダ、
シンガポールのマーライオンなどご当地動物の姿が。

動物園ばりの多様なラインナップで、
ふっと気が抜ける、まぬけものがまだまだあるではないですか!

「たしかに動物、多いですね(笑)。家にはキャラものはほとんどないけれど、潜在的にはかわいいものが好きなのかも。また、旅をしていると、動物モチーフを見つけることが多いからなのかな。旅先での買物は一期一会ですが、かわいいから、安いからといってたくさん買うことはしないんです」

たとえば、香港のパンダモチーフのスリッパ。
洋服やインテリアでは取り入れにくいような鮮やかな色を選べるのは消耗品だから。
気分があがるうえ、来客との会話のきっかけにもなる。
こうした、いくつもの手に入れたい理由が重なってから、
やっと手に入れるとか。

Editor’s note

柳沢さんらしい「ものを厳選する」とは。
「身軽に暮らしたいけれど、生活感を隠そうとはしていないんです。アジアを旅すると、いろんな価値観に触れ学ぶことが多いんです。掃除や料理などきちんとするのも日本人くらい。そこまで家事もがんばらなくてもいい。人とものがあって生活なので、ごちゃっとしていてもいいのかも」

役に立つ、立たないという目線だけではなく、おもしろい、楽しい、思い出がある……。
そんな、暮らしを照らしてくれる自分だけの光を持つもの。
そんなゆるさが漂う、「もの」のあり方を教えてもらいました。

間があって、貫けがある。
間貫けのハコへ、おかえりなさい。

新登場
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